過去最大のエルニーニョと暖冬予想|芝生の冬越しと春はどう変わる
編集: しばしば芝編集部(編集方針)

気象庁は2026年10月9日、春から続くエルニーニョ現象が9月に過去最大の強さになったと発表しました。9月18日発表の予報では、この冬の気温は東日本と西日本で「高い」見込みです。ただし季節予報は確率で示され、暖冬と決まったわけではありません。芝生の手入れで変わるのは、作業の「時期」です。暖冬になれば休眠入りが遅れ、春の芽吹きが早まります。刈り納め・冬雑草・春の肥料は、暦ではなく気温と芝の様子で決めましょう。
この記事でわかること
- 「過去最大のエルニーニョ」の中身と、この秋冬の予報の読み方
- エルニーニョと日本の冬の関係、過去の強いエルニーニョの冬
- 2026年夏の天候の答え合わせ
- 暖冬かどうかで、芝生の手入れの何が変わるか
- 予報に合わせて決めることのチェック表
何が起きたか|9月の海面水温が基準値より4.0℃高く、過去最大に
太平洋赤道域の東部で、海面水温の基準値との差が1949年以降で最も大きくなりました。2026年10月9日の気象庁「エルニーニョ監視速報(No.409)」によると、9月の監視海域の海面水温は基準値より4.0℃高く、それまでの最高だった1997年12月の+3.6℃を上回りました。
エルニーニョ現象は、太平洋の赤道付近の日付変更線から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より高い状態が1年ほど続く現象です。気象庁は6月10日に、春から発生しているとみられると発表していました。
2026年 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
|---|---|---|---|---|---|---|
基準値との差 | +0.7℃ | +1.2℃ | +1.9℃ | +2.5℃ | +3.4℃ | +4.0℃ |
基準値は前年までの30年間の各月の平均です(9月は速報値)。速報は、冬にかけて過去最大の強さで続く見込み(100%)としています。一方で、9月の日本の天候にはエルニーニョ現象のときの特徴ははっきり見られなかったとしています。海の記録が、そのまま日本の暖冬を意味するわけではありません。
この秋冬の予報|気温は「高い」見込み。ただし確率の予報
気象庁の予報は、この秋も冬も、気温が高い方へ傾いています。10月14日時点の予報をまとめました。
予報(発表日) | 北日本 | 東日本 | 西日本 | そのほかの見通し |
|---|---|---|---|---|
1か月予報:10月10日〜11月9日(10月8日) | 高い(60%) | 高い(70%) | 高い(70%) | 前半はかなり高い。東・西日本の日照時間は平年並か多い |
3か月予報:10〜12月(9月18日) | 高い(50%) | 高い(50%) | 高い(50%) | 降水量は北・東日本の太平洋側と西日本で平年並か多い |
寒候期予報:12〜2月(9月18日) | 平年並か高い | 高い(60%) | 高い(60%) | 降雪量は東・西日本の日本海側で少ない。降水量は東日本太平洋側と西日本で多い |
「高い(60%)」は「高い」になる確率です。「低い」「平年並」「高い」の3つの階級は、1991〜2020年の30年間で10回ずつ現れるように決めてあり、手がかりがなければどれも33%です。60%でも平年並になる余地は残り、確率の大きさは暖かさの程度を表しません(気象庁)。
予報の根拠は、温暖化とエルニーニョ現象の影響で熱帯を中心に大気の温度が高く、冬の季節風が弱いことです。次の3か月予報は10月20日に発表され、冬の予報もこれに合わせて見直されます。
背景と仕組み|エルニーニョの冬は「西日本で平年並か高い」傾向
エルニーニョ現象の冬は、日本付近に寒気が入りにくくなる傾向があります。気象庁の解説では、フィリピン周辺で積乱雲が少なくなり、上空の偏西風(亜熱帯ジェット気流)が日本周辺で弱まります。冬の季節風も弱まりやすくなります。
ただし、気象庁が戦後のエルニーニョの年をまとめた統計ではっきりしているのは、冬の気温が「西日本で平年並か高い」、冬の降水量が「東日本太平洋側などで多い」傾向です。秋はむしろ西日本で気温が低い傾向で、今年の秋の高温予報は温暖化の影響も根拠にしています。
過去の強いエルニーニョの冬も、すべてが暖冬ではありません。監視海域の差が+2.3℃以上になった5回の現象と、その冬を並べました。
エルニーニョ現象の期間(差の最大値) | その冬の日本の平均気温 |
|---|---|
1972年春〜1973年春(+2.6℃) | 1972/73年冬 +0.45℃ |
1982年春〜1983年秋(+3.2℃) | 1982/83年冬 −0.38℃ |
1997年春〜1998年夏(+3.6℃) | 1997/98年冬 +0.28℃ |
2014年春〜2016年春(+3.1℃) | 2015/16年冬 +0.78℃(2014/15年冬は−0.22℃) |
2023年春〜2024年春(+2.3℃) | 2023/24年冬 +1.27℃ |
気温は日本の平均で、1991〜2020年の平均との差です(気象庁)。冬の気温は100年あたり1.26℃の割合で上がっているため、古い年ほど低めに出ます。それでも冬の気温には幅があり、「過去最大だから記録的な暖冬」とは言えません。
2026年夏の答え合わせ|西日本は高温・少雨だった
エルニーニョの夏は西日本で涼しくなりやすいとされますが、2026年の夏は逆でした。気象庁の9月1日の発表では、西日本の夏の平均気温は1946年以降で3番目の高さで、最高気温40℃以上の「酷暑日」は延べ36地点でした。8月の九州北部地方の降水量は1946年以降で最少です。東日本の太平洋側は逆に、台風や千葉豪雨で雨の多い夏でした。
気象庁は、この夏の偏西風の流れに過去のエルニーニョのときとは異なる特徴があったとしています。統計上の傾向どおりにならないことがある点は、冬も同じです。夏に薄くなった場所は、暖かい秋でも肥料で急いで取り戻そうとせず、写真に残して春に手を入れましょう。
家庭の芝生への影響|暖冬になった場合・ならなかった場合
暖冬かどうかで変わるのは作業の時期で、やり方は変わりません。日本芝は平均気温が15℃前後で生育が鈍り、12℃を下回るころに完全に休眠します。春は10〜12℃ほどで生育を始めます(バロネス・雪印種苗)。暖かい年は、この目安を越える時期がずれます。
項目 | 暖かい秋冬になった場合 | 平年並みだった場合 | 決め手 |
|---|---|---|---|
休眠入り | 遅れる。11月も緑が残りやすい | 一般地は11月中旬〜下旬 | 色が抜けてきたか |
最後の芝刈り | 伸びていれば回数が増える | 一般地は10月下旬〜11月上旬 | 前回から伸びたか |
緑が長く見えても足さない | 生育が鈍ったら与えない | 春まで待つ | |
冬雑草 | 伸び続ける期間が長くなりやすい | 例年どおり | 見つけたら抜く |
病気 | 雨も多ければ、春の芽吹きのころに注意 | 例年どおり | 春に円形の変色を見回る |
水やり | 予報どおりなら太平洋側も雨が多め | 太平洋側は冬に乾きやすい | 土が乾き切ったか |
芽吹きと遅霜 | 芽吹きが早まり、霜に当たりやすい | 例年どおり | 霜の予報と芝の色 |
休眠入りと最後の芝刈り|1℃高いと5日ほど遅れる計算
東京の平年値では、11月の旬(10日ごと)の平均気温は上旬14.4℃、中旬12.5℃、下旬10.8℃です。旬ごとに2℃近く下がるので、仮に平年より1℃高い状態が続けば、休眠の目安に届くのは5日ほど遅れる単純な計算です。
刈り納めは日付ではなく、前回の芝刈りからの伸びで決めます。1週間ほどたっても伸びがわずかなら休眠が近い合図です。まだ伸びていれば、葉が乾いた日に伸びた分だけ、葉の長さの3分の1までを刈ります(芝刈りの基本)。KINCHO園芸の栽培暦は、葉がある程度伸びた状態で休眠に入る方が冬のすり切れが減るとしています。暖かいからと短く刈り込まないでください。地域ごとの時期は11月の芝生の手入れで確かめられます。
緑が長く残っても、生育が鈍ってからの肥料は足しません。同じ栽培暦は、秋の肥料は緑を長く保つぶん寒さへの抵抗力を失わせるとしています。
冬雑草|スズメノカタビラは涼しい時期に伸びる
代表的な冬雑草のスズメノカタビラは、地温が21℃ほどを下回るころに芽を出し、葉のまま冬を越して春に種をつくります。日が短く涼しい条件でよく育ち、晩秋と早春にはほかの芝より優勢になりやすい草です(米ジョージア大学)。暖冬で寒さに止められる期間が短くなれば、休眠した芝の中で伸びる時間が長くなると考えられます。
対策は、見つけたものから根ごと抜き、冬の間も見回ることです。休眠中の芝への肥料は、生長中のスズメノカタビラを助けるとされます。除草剤を使うなら、ラベルの使用時期(「芝生育期」か「芝発芽前」か)を、いまの芝が伸びているか休眠したかで確かめます。暖かい秋は、この境目がずれやすくなります。詳しくは芝生のスズメノカタビラ対策にまとめています。
病気|暖かく雨の多い冬のあとは、春のラージパッチに注意
ラージパッチは、芝が緑に戻るころ、直径60cm〜3mほどの円形に茶色く沈んだ部分が出る病気です。米ノースカロライナ州立大学の高麗芝の仲間(ゾイシアグラス)の管理暦は、長雨や曇りが続くと出やすく、暖かく雨の多い冬のあとは、芽吹きのころに殺菌剤が必要になることがあるとしています。今冬の予報は東日本太平洋側と西日本で降水量が多く、この条件に近づく可能性があります。春は円形の変色がないかも見回りましょう。
乾燥と水やり|「冬は乾く」とは限らない
太平洋側の冬は晴れて乾く日が多いものですが、今冬の予報では東日本太平洋側と西日本の降水量が多い見込みです。どちらでも、水やりは土の乾きで決めます。休眠した芝は、晴れて3〜4週間ほど雨がなく、根のある土まで乾いたときだけ補います(米クレムソン大学)。芝が伸びている秋のうちも、雨が少なく根のある深さまで乾いたときに与えます。量と時間帯は芝生の水やり完全ガイドと冬の芝生の手入れで解説しています。
早い芽吹きと遅霜|芽吹きと霜の終わりが近い地域ほど注意
米クレムソン大学は、高麗芝の仲間が冬の終わりから春先に芽吹いては遅霜で傷むのを、何度か繰り返すことも珍しくないとしています。気象庁の平年値で、芽吹きの目安(旬の平均気温が10℃を超えるころ)と霜の終日(最後の霜の日)を比べました。
地域の例 | 芽吹きの目安 | 霜の終日の平年値 |
|---|---|---|
仙台 | 4月中旬(10.6℃) | 4月7日 |
東京 | 3月下旬(10.5℃) | 2月14日 |
大阪 | 3月下旬(11.1℃) | 3月18日 |
福岡 | 3月中旬(10.9℃) | 3月12日 |
鹿児島 | 2月下旬(11.4℃) | 2月26日 |
福岡や鹿児島では、平年でも芽吹きの目安と霜の終日がほぼ重なります。暖冬で芽吹きが早まれば、その後の冷え込みで新芽が傷むおそれがあります。東京は両者が離れていますが、観測点は市街地で、郊外や内陸の庭では霜が遅くまで降りることがあります。霜の朝は芝に乗らず、芽吹いた直後に肥料や短い芝刈りで生長を急がせないようにします。
春の作業の始め方|暦ではなく「芽吹きがそろったか」で
KINCHO園芸の栽培暦では、関東の高麗芝は4月下旬に芽吹きがそろい、最初の芝刈りのあとに最初の肥料を与えます。2〜3月の肥料は冬の雑草を元気づけるだけだとしています。米国の大学の管理暦も、窒素は芝が十分に緑になってから、または緑に戻って3週間ほど後としています。暖かい春は前倒しできますが、合図は芝の様子です。年間の流れは芝生の手入れ完全ガイドで確認できます。
予報を見て何を決めるか|この秋冬のチェック表
予報は「いつ作業を見直すか」を知らせる目覚まし時計として使います。実際に決めるのは、自分の庭の芝の様子です。
時期 | 見る情報 | 決めること |
|---|---|---|
10月20日(火) | 3か月予報(冬の予報は変更があれば修正発表) | 芝刈りと冬雑草の見回りをいつまで続けるか |
毎週木曜 | 1か月予報 | 芝の伸びとあわせて、刈り納めの日 |
11月 | 庭の芝の色と伸び | 刈り納めと休眠に入った日を記録する |
11月24日(火) | 3か月予報(12〜2月) | 冬の水やりと冬雑草の見回り方 |
2〜3月 | 1か月予報と霜の予報 | 芽吹いた芝を踏まない。肥料を急がない |
芽吹きがそろったら | 芝の色 | 最初の芝刈り、そのあとに肥料 |
刈り納めの日、休眠に入った日、芽吹いた日を、アプリ「しばしば芝」のお手入れ記録に残しておくと、暖冬の年と平年並みの年を見比べ、翌年に何日ずらせばよいかの手がかりにできます。
よくある質問
エルニーニョ現象の年は必ず暖冬になりますか?
必ずではありません。統計上の傾向は「西日本で平年並か高い」までで、強いエルニーニョでも1982/83年のように平年を下回った冬があります。今冬の予報も「高い」確率は東・西日本で60%(北日本は40%)で、平年並の可能性が残ります。
暖冬なら、芝生は冬も緑のままですか?
本州の多くの地域では、暖冬でも高麗芝は休眠して茶色くなります。休眠入りが遅れ、芽吹きが早まると考えるのが現実的です。沖縄などの暖かい地域では、冬も休眠せずに緑を保つことがあります。
秋が暖かいなら、肥料を足して緑を長く保ってもいいですか?
生育が鈍ってからは、おすすめしません。秋の肥料は緑を長く保つぶん、寒さへの抵抗力を落とすとされます。休眠中の肥料は冬雑草を助けることにもなります。肥料は春、最初の芝刈りのあとに再開しましょう。
暖冬の年はスズメノカタビラが増えますか?
伸びやすい条件にはなると考えられます。涼しく日の短い時期によく育つ草なので、寒さで止まる期間が短いと伸びる時間が長くなります。冬の間も、見つけたら根ごと抜いてください。
暖冬なら、春の芝刈りや肥料を早めてもいいですか?
暦ではなく、芽吹きがそろったかで決めます。暖冬のあとは芽吹きが早まる一方、遅霜で新芽が傷むことがあります。芽吹きがそろってから最初の芝刈りをし、肥料は遅霜の心配がなくなってから与えます。
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