W杯決勝の芝は寒さに強いバミューダ|家庭のティフトンと同じ仲間
編集: しばしば芝編集部(編集方針)

2026年のサッカー・ワールドカップ(W杯)は、北米の16会場すべてを天然芝にして行われました。芝の種類は大きく2つで、FIFAが暖地型とした会場はバミューダグラス、寒地型とした会場や屋根付きの会場はケンタッキーブルーグラスとライグラスの混合です。7月19日の決勝は、米国のオクラホマ州立大学が開発した寒さに強いバミューダグラス「Tahoma 31」の上で行われました。どちらも日本のティフトンや西洋芝と同じ仲間です。会場の芝づくりから、家庭の庭に生かせる考え方を整理します。
この記事でわかること
- 2026年W杯の16会場で使われた芝の種類と、決勝の芝「Tahoma 31」の特徴
- 人工芝のスタジアムを、大会の間だけ天然芝に変えた方法
- 大会後の芝の行方と、NFLで続く天然芝・人工芝の議論
- ティフトン・西洋芝・オーバーシードとの共通点と違い
- 刈高・踏まれる場所・日当たりなど、家庭の庭に生かせること
何が起きたか|W杯は全16会場が天然芝、決勝はTahoma 31
2026年W杯は全16会場が天然芝で、そのうち3会場の18試合が、決勝と同じTahoma 31の上で行われました。
FIFA(国際サッカー連盟)の2026年6月6日の発表によると、大会は米国・メキシコ・カナダの16会場で104試合を行い、6月4日に16面目のピッチを敷き終えました。16会場のうち8会場は普段は人工芝で、そのうち5会場は屋根付きです(米科学誌サイエンティフィック・アメリカン、6月10日)。内訳はNFL(米プロフットボールリーグ)の球場7つと、カナダ・バンクーバーの会場です。
オクラホマ州立大学の2026年7月13日の発表によると、決勝の会場はニュージャージー州のMetLife Stadiumです。Tahoma 31を使ったのは3会場です。メキシコのEstadio BBVAで4試合、カリフォルニア州のLevi's Stadiumで6試合、MetLife Stadiumで決勝を含む8試合でした。前の世代の品種「NorthBridge」の会場も合わせると、104試合中28試合が同大学のバミューダグラスでした。
会場のタイプ | 使われた芝の種類 | 例 |
|---|---|---|
暖地型の会場 | バミューダグラス(暖地型) | 決勝のMetLife Stadium(Tahoma 31) |
寒地型・屋根付きの会場 | ケンタッキーブルーグラス+ライグラス(寒地型) | バンクーバーの会場 |
寒地型の配合は、米スポーツ局ESPN(6月12日)がケンタッキーブルーグラス84%・ライグラス16%と伝え、FIFAはバンクーバーの会場で種子を半々に混ぜたとしています。示し方が違うため、単純には比べられません。
決勝の芝「Tahoma 31」はどんな芝か
Tahoma 31は、バミューダグラスの弱点である寒さへの強さを品種改良で高めた芝です。
オクラホマ州立大学の2019年3月13日の発表によると、Tahoma 31は開発と性質の確認に10年以上かかった品種です。名前は先住民の言葉で「凍った水」を意味します。前の品種より寒さと乾燥に強く、春に緑へ戻るのが早いと説明されています。
バミューダグラスは本来、暖かい地域の芝で、冬の寒さで枯れやすい草種です。同大学は品種改良でこの弱点を補い、より北の地域でも使えるようにしてきました。葉は濃い緑で細かく、密度が高い芝です。密に詰まった芝が、急に向きを変える選手の足元を支えて滑りにくくするとしています(2026年の発表)。ただし大会中、MetLife Stadiumのピッチの状態には選手や監督から批判も出ていたと報じられています(AP通信、7月11日)。なお、2026年10月時点で、Tahoma 31が日本国内で一般向けに流通しているという情報は確認できませんでした。
背景|なぜ人工芝の会場を天然芝にしたのか
FIFAが目標にしたのは、どの会場でもボールの弾み方や足元の感触が同じになることです。
FIFAの6月6日の発表は、気候も標高も建物も違う16会場で、同じようにプレーできるピッチを目標に挙げています。さらにFIFAは、上位の大会のピッチに、表面から10〜18cmの深さまで人工繊維を縫い込むことを求めています。均一さと耐久性を高めるためで、厳密には天然芝を人工繊維で補強した「ハイブリッド芝」です。
準備は、2022年6月の開催会場の発表後に始まった5年計画でした。FIFAはテネシー大学・ミシガン州立大学と組みました。屋根付きスタジアムの中を再現する日よけの施設や、床の上に芝を敷く工程を試す約2,100㎡のアスファルト面で研究しています(FIFA、2024年4月12日)。
仕組み|仮設の天然芝はどう敷いて育てたか
芝はスタジアムの外の農場で育て、砂の土台の上に運んで敷き、屋根のある会場では人工の光で育て続けました。
FIFAによると、芝は2025年3〜8月に北米各地の農場で植えられ、運搬距離は長いところで約2,250kmでした。芝はプラスチックの上で厚さ約5cmに育て、スタジアムの床に根を張らずに運べるようにしていました(サイエンティフィック・アメリカン)。
ヒューストンの会場では、蜂の巣状の土台の上に散水の配管と約25cmの砂を重ね、平らにならしてから芝を敷き、人工繊維を縫い込みました(FIFA)。MetLife Stadiumでは、ノースカロライナ州で育てた約600本のロール状の芝を敷きました。下には約45〜60cmの砂、水を通すシート、空気を吸い出して通気する層があります(AP通信、5月7日)。
屋根のある会場では育成用の照明が欠かせず、ダラスの会場は天井から下ろす照明18台、ほかの会場は車輪付きの照明9〜12台を使いました(同じ科学誌)。もう一つの工夫が刈高です。FIFAの担当者は、以前の大会と違い、暖地型と寒地型の芝は刈高を変えたほうが同じようにプレーできると分かったと説明しています。
大会後|芝はどこへ行ったのか
人工芝だった会場は、大会後に天然芝を外して人工芝へ戻す予定とされ、外した芝を再利用する会場もあります。
NFLの7球場は大会後に人工芝へ戻すと報じられ(ESPN)、ダラスのAT&T Stadiumでは7月16日の朝に天然芝が撤去されました(地元テレビ局FOX 4)。
バンクーバーの会場について、FIFAは9月11日に再利用の取り組みを発表しました。芝を切ってロールにし、育てた近くの農場へ戻して、約12か月かけて人工繊維と天然の素材を分けます。人工繊維はリサイクルに、天然の素材は新しいピッチや芝の生産に回します。決勝の芝の一部は、アクリルに封じた記念品として1個450ドルで販売されました(AP通信、7月11日)。
NFLで続く天然芝論争と、負傷データの読み方
天然芝を望む選手は多い一方、負傷のデータは資料によって結論が分かれ、どちらとも言い切れません。
NFLの30球場は、半分が天然芝、半分が人工芝です(ESPN)。選手会は全球場の天然芝化を求め、「#WorthTheCost(費用をかける価値がある)」と発信しました(米CBS Sports、7月20日)。選手会の調査では、92%の選手が天然芝を好むと答えています(ESPN)。
一方、NFLは2026年1月の会見で、負傷の数は人工芝0.43・天然芝0.42で同程度だとする数字を示しました(ESPN)。何あたりの数かは報道から読み取れません。逆に、2012〜18年のNFLの負傷データでは、人工芝で接触のない膝の負傷が32%、足と足首の負傷が69%多かったとも報じられています(CBS Sports)。
期間も数え方も違う数字を並べても、結論は出せません。家庭の庭で選ぶなら、夏の表面の熱さ、手入れの手間、費用で比べるほうが現実的です。比べ方は人工芝と天然芝の比較にまとめています。
日本の家庭の芝と比べると|ティフトンと西洋芝の仲間
W杯で使われた芝は、どちらも日本で手に入る芝の仲間です。ただし同じ品種ではなく、日本の気候での向き不向きがあります。
バミューダグラスは日本のティフトンと同じ仲間
日本でティフトンとして売られる「ティフトン419」は、種苗メーカーの品種表でバミューダグラスの欄に載っています(タキイ種苗)。乾燥と踏まれることに強い一方、寒さには強くないため、関東以西の温暖地で使われます。種ができないので、苗を植えるか芝を張って育てます。埼玉県の芝生管理マニュアルは、日陰と寒さに弱く、芝刈りや水やりの回数が多くなる点も挙げています。購入の形や時期はティフトン芝の購入ガイドで確認できます。
寒さに強いバミューダグラスは日本でも売られており、種苗メーカーのカタログには、ティフトン419より寒さに強く、東北中南部まで越冬できるとされる種子系の品種が載っています(タキイ種苗)。ただし暖地型なので、冬に休眠して茶色くなる点は変わりません。
寒地型の会場の芝は、日本の西洋芝・オーバーシードと同じ草種
ケンタッキーブルーグラスとライグラスは、日本では寒地型(冬芝)の西洋芝です。冬も緑を保つ一方、関東以南では梅雨明けの暑さでほとんど消えてしまいます(埼玉県のマニュアル)。ライグラスは、冬に茶色くなる夏芝の上に種をまく「オーバーシード」によく使われます。種苗メーカーの例では、オーバーシード用ペレニアルライグラスの秋の種まきは、一般地で9月中旬〜10月中旬、西南暖地で9月下旬〜10月下旬です(雪印種苗)。10月中旬の今は、一般地では適期の終わりにあたります。
W杯で使われた芝 | 日本で近い芝 | 家庭で使うときの注意 |
|---|---|---|
バミューダグラス(Tahoma 31など) | ティフトン419などのバミューダグラス | ティフトン419は日陰と寒さに弱い。冬は休眠して茶色になる。関東以西の温暖地向き |
ケンタッキーブルーグラス | 寒地型の西洋芝 | 冬も緑。関東以南では夏越しが難しい |
ライグラス | オーバーシード用の西洋芝 | 秋にまく。春は夏芝への切り替えが必要 |
芝の種類全体の違いは芝生の種類と選び方、冬の緑を足す手順はオーバーシードのやり方で解説しています。
家庭の庭に持ち帰れること
草種に合わせて手入れを変える、踏まれる場所を休ませる、光を確保する。この3つは、スタジアムと同じ考え方で家庭の庭にも使えます。
刈高は草種に合わせて変える
家庭の庭でも、W杯と同じく芝の種類ごとに合う刈高は違います。高麗芝なら20〜30mmが目安で、一度に刈るのは伸びた葉の長さの3分の1までです。バミューダグラスは頻繁な低刈りにも耐える草種とされ(オクラホマ州立大学)、西洋芝は種や苗の販売元が示す刈高に合わせます。刈り方の基本は芝刈りの基本にまとめています。
踏まれる場所は、土台と休ませる時間で守る
スタジアムのピッチは、厚い砂の土台と人工繊維の補強で踏みつけに耐えるようにつくられていました。家庭の庭では、通り道や遊び場の土が締まって根が弱ることが傷みの大きな原因です。生育期に穴をあけて空気を通し、薄く目土を入れて休ませると回復を助けます。手順は踏まれて傷んだ芝生の回復方法を参考にしてください。ティフトンのような夏芝は休眠中に回復する力がなく、冬に使いすぎると枯れることがあります(埼玉県のマニュアル)。
日当たりが足りない場所は、品種より先に光を考える
屋根付きのスタジアムでは、自然の光が足りない分を照明で補って天然芝を保ちました。家庭の庭ではまず日当たりを確かめます。バミューダグラスは日陰に弱く、寒地型ではフェスク類が日陰に強いとされます(埼玉県のマニュアル)。光がどうしても足りない場所は、芝以外の植物や敷石も検討してください。刈高や傷み具合は、アプリ「しばしば芝」のお手入れ記録に残しておくと、季節ごとの違いを比べやすくなります。
そのまま真似できないこと
W杯のピッチは、650人を超えるグラウンドキーパーと砂の土台、照明をそろえ、約1か月の大会のためにつくられました。家庭の庭とは規模も予算も目的も違います。
海外の報道に出てくる薬剤や資材も、日本で登録・販売されているとは限りません。日本では原則として登録を受けた農薬以外は使えないので(農薬取締法第24条)、国内の登録とラベルで芝に使えるかを確かめてください。海外の芝の苗や種子を取り寄せる場合は、植物防疫所の輸入植物検疫の対象になります。
よくある質問
2026年ワールドカップの芝の種類は何でしたか?
FIFAが暖地型とした会場はバミューダグラス、寒地型とした会場や屋根付きの会場はケンタッキーブルーグラスとライグラスの混合でした。7月19日の決勝は、バミューダグラス「Tahoma 31」の上で行われました。
Tahoma 31は日本で買えますか?
2026年10月時点で、日本国内で一般向けに流通しているという情報は確認できませんでした。国内では、ティフトン419より寒さに強いとされるバミューダグラスの種子も売られています。
ティフトンとバミューダグラスは違うものですか?
ティフトン419は、バミューダグラスの仲間の品種です。種ができないため、苗か切り芝で育てます。暑さと踏まれることに強い点はW杯のバミューダグラスと共通ですが、Tahoma 31は寒さへの強さを高めた品種で、開発元は日陰への強さも特長に挙げています。
天然芝と人工芝はどちらがけがをしにくいですか?
資料によって結論が分かれています。NFLは同程度とする数字を示し、2012〜18年のデータでは人工芝で膝や足首の負傷が多かったとも報じられています。家庭の庭なら、熱さ・手入れ・費用で比べるのが現実的です。
W杯の芝のように、家庭の芝も冬に緑を保てますか?
高麗芝やティフトンの上にライグラスなどの種をまくオーバーシードで、冬も緑を保てます。種まきは一般地で9月中旬〜10月中旬が目安です。春は夏芝への切り替えに手間がかかる点も考えて始めてください。
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