芝生用農薬の選び方|除草剤・殺菌剤・殺虫剤を症状別に整理

結論:芝生用農薬は「症状・芝種・対象・使い方」の順で選ぶ
芝生用農薬は、商品名や「よく効く」という印象だけで選ばず、まず困っている原因が雑草・病気・害虫のどれかを切り分けます。そのうえで、育てている芝の種類、対象となる雑草・病害虫、希釈倍率や散布量、使用時期・回数がラベルに合う製品を選びます。
同じ「芝生用」でも、ラベルの「適用作物」欄が日本芝だけの製品や、西洋芝のうちベントグラスなど特定の芝だけに使える製品があります。「適用作物」は、その農薬を使ってよい植物の区分です。農林水産省は、農薬を使用できる作物と使用方法を登録によって定めており、ラベルにない作物へは使用できないと案内しています。購入前と散布直前の2回、登録番号とラベルを確認しましょう。
初めて選ぶときの最短手順:症状を写真に残す → 芝の種類を確認する → ラベルで対象と使い方を照らし合わせる、の3段階で進めます。芝の種類や原因を判断できないときは、薬剤を使う前に専門家へ相談します。
登録番号・対象芝・適用病害虫を製品ごとに探す場合は芝生の薬剤・肥料データベースを利用できます。この記事では、製品を選ぶ順番と、必要量を間違えにくくする方法を解説します。
最初に確認するのは「何が原因か」
葉が茶色いから殺菌剤、虫を見たから殺虫剤、とすぐに決めるのは避けます。水切れ、肥料焼け、芝を短く刈りすぎる軸刈り、人が歩くなどして芝が圧迫される踏圧でも、似た症状が出るためです。これらは農薬では改善しません。次の順番で状況を整理します。
- 雑草か:芝とは異なる葉・茎・花があり、種類を見分けられるか
- 病気の疑いか:円形・帯状などの広がり方、葉の斑点、粉状物、発生時期を確認する
- 害虫の疑いか:葉の食害、根の減少、幼虫や成虫、鳥がつつく様子があるか
- 管理障害ではないか:乾燥、過湿、低刈り、肥料や薬剤の散布ムラと一致しないか
原因が判断できないまま複数の薬剤を重ねると、効果を評価しにくくなり、芝への負担も増えます。症状の写真、発生場所、天候、直前の作業を記録してから候補を絞りましょう。
除草剤・殺菌剤・殺虫剤の違い
種類 | 対象 | 選ぶときの確認点 |
|---|---|---|
除草剤 | 芝生内の雑草、または芝を含む植物全体 | 選択性(芝を残して対象雑草を抑える)か、非選択性(芝を含む多くの植物を枯らす)か。あわせて、対象芝、適用雑草、発生前・発生後などの使用時期を確認 |
殺菌剤 | 登録された芝の病害 | 病名、芝種、発病前・発病初期などの時期、希釈倍率と散布液量 |
殺虫剤 | 登録された害虫 | 害虫名と発育段階、芝種、粒剤・液剤、散布後の散水の要否 |
除草剤:芝を残す薬剤か、植物全体を枯らす薬剤か
「選択性除草剤」は、ラベルに登録された芝種を残しながら、対象雑草を抑える薬剤です。芝生内で使う場合は、このタイプが候補になります。「非選択性除草剤」は芝を含む多くの植物を枯らすため、芝生内では原則として使いません。農林水産省は、芝や花きなどの栽培・管理に使う除草剤には農薬登録が必要であり、ラベルの作物名と使用方法を守るよう案内しています。
除草剤の基本的な使い分けは芝生の雑草対策の基本で詳しく解説しています。
殺菌剤:茶色い場所ではなく登録病名で選ぶ
病気によって登録されている殺菌剤が異なります。また、同じ葉腐病でも日本芝のラージパッチと西洋芝のブラウンパッチでは、使える製品や条件が同じとは限りません。芝種、病名、使用時期を確認し、判断が難しい場合は植物病院や芝生管理の専門家へ相談します。
代表的な症状と登録殺菌剤の整理は芝生の病気と殺菌剤の選び方で確認できます。
殺虫剤:害虫名と幼虫・成虫の違いまで確認する
根を食べるコガネムシ類幼虫と、葉を食べるシバツトガ・スジキリヨトウでは被害の出方や登録条件が異なります。同じ製品でも対象害虫によって散布液量が大きく変わる場合があるため、害虫名まで合わせてください。コガネムシ類幼虫の確認方法はコガネムシの幼虫から芝生を守るで解説しています。
ラベルで必ず見る4項目
1.適用作物・芝種
「芝」「日本芝」「西洋芝(ベントグラス)」など、ラベルの表記を確認します。日本芝向けの登録があっても、西洋芝に使えるとは限りません。商品名が似ている別製品もあるため、登録番号まで照合すると取り違えを防ぎやすくなります。
2.適用病害虫・雑草
除去したい雑草、病気、害虫が適用欄にあるか確認します。「広葉雑草」などの包括的な登録と、個別の雑草名が書かれた登録を自己判断で広げないようにします。
3.希釈倍率・薬量・散布液量
希釈倍率は「薬剤を水で何倍に薄めるか」、散布液量は「薄めた液を一定面積にどれくらいまくか」を示します。「1000倍」だけでは必要量が決まらない場合があるため、面積あたりの散布液量や薬量も確認してください。特に土へしみ込ませる処理は、葉にかける散布より多くの液量が必要なことがあります。
4.使用時期・使用回数・注意事項
「本剤の使用回数」はその製品を使える回数です。「同じ有効成分を含む農薬の総使用回数」は、商品名が違っても同じ成分を使った回数を合計した上限です。発生前、発病初期、幼虫発生期などの使用時期とあわせて確認します。防護具、周辺への飛散、散布後の立ち入り、散水や降雨に関する注意も製品ごとに異なります。
剤型(薬の形)に合う方法で必要量を計算する
剤型とは、液剤、水和剤、粒剤など、製品の形や使い方による分類です。面積を測り、ラベルの数値を確認したら、その数値に対応する計算機がある場合だけ、自分で入力します。計算機は、製品・対象芝・病害虫・使い方を選びません。計量単位は剤型名だけで決めず、ラベルの表示に従います。液状製剤はmL、粉末・顆粒状の製剤はgで示されることが一般的ですが、同じ「水和剤」でも液状製剤があります。粉体を小さじ換算するのは避け、食品用と共用しない専用のはかりなどで正確に計量します。水で薄めるときはラベルやメーカーの手順に従い、必要量より少なめの水に薬剤を加えて混ぜ、最後に水を足して所定の仕上がり量へ合わせます。水で薄める粉末・顆粒状の薬剤では、薬剤の質量を水量から差し引きません。
- 水で薄める製品:ラベルで確認した希釈倍率と、作る散布液の仕上がり量を農薬・液肥の希釈計算機へ入力して、薬剤量(液剤は水量も)へ換算。面積あたりの散布液量が指定されている場合は、その値と庭の面積から仕上がり量を先に求める
- そのまま散布する粒剤・粉粒剤:ラベルで確認したg/㎡などの量と庭の面積を粒剤・肥料の散布量計算機へ入力し、面積全体の必要量へ換算
- そのまま使うスプレー:希釈せず、ラベルの散布方法と使用面積を確認

計算機は、ラベルで確認した数値を換算するための道具です。製品名を選ぶ機能や、使ってよい芝・病害虫・倍率を判断する機能はありません。「10aあたり○g」など薬量で指定された製品は、その指定に従い、希釈倍率へ読み替えないでください。計算結果はラベル確認を省略するものではありません。製品の登録内容は変更されることがあるため、手元の最新ラベルと農薬登録情報を優先してください。
散布前後の安全チェック
- 長袖、手袋、マスク、保護メガネなど、ラベル指定の防護具を着用する
- 風が強いときや、ラベルで避けるよう示された天候では散布しない
- 子どもやペット、洗濯物、池や水路、周辺植物への影響を確認する
- 必要量だけ調製し、余った薬液や洗浄水を排水口・河川へ流さない
- 使用日、製品名、対象、量、場所を記録する
農林水産省も、適用作物、使用時期、使用方法の確認と使用記録を重視しています。後から効果や、芝への悪影響(薬害)を振り返れるよう、散布前後の写真も残しておくと役立ちます。
よくある疑問
「庭用」「芝生にも使える」と書かれていれば使えますか?
表面の説明だけで判断せず、ラベルの適用作物に育てている芝があるか確認します。登録番号、対象病害虫・雑草、使用方法が一致しなければ使用しません。
除草剤・殺菌剤・殺虫剤を同じ日に使えますか?
製品ごとの混用可否や使用条件によります。自己判断で混ぜず、各ラベルとメーカー情報を確認してください。原因を切り分けたい場合は、必要な処理を一つずつ記録しながら行うほうが評価しやすくなります。
以前買った農薬をそのまま使ってもよいですか?
容器に表示された最終有効年月、容器の状態、現在の登録内容を確認します。ラベルが読めない、小分けで製品を特定できない、保管状態に不安がある場合は使用しません。
参考にした公的情報(2026年7月21日確認)
- 農林水産省「農薬を使用することができる作物群」
- 農林水産省「除草剤の販売・使用について」
- 農薬登録情報提供システム
- クミアイ化学工業「農薬希釈計算・正しい希釈液の作り方」
- 農林水産省「農薬適正使用の指導に当たっての留意事項」
- 農林水産省「農薬の不適正使用を防止するための基本的な対策」
まとめ:製品を決める前に登録条件を照合する
芝生用農薬は、症状を切り分け、芝種と対象を確認してから選びます。購入前に登録番号と適用表を確認し、散布前には希釈倍率・薬量・散布液量・時期・回数・注意事項をもう一度読みます。
製品情報は芝生の薬剤・肥料データベースで確認し、ラベルで確認した数値の換算には芝生の計算ツールを利用できます。計算機だけで製品や使い方を決めず、最終判断では必ず手元の製品ラベルを優先してください。
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